白銀の女神 紅の王
「………?」
自分の胸に手を当て、走った痛みに違和感を覚える。
今の痛みは何?
一瞬、心臓を鷲掴みにされた様な感覚の後、痛みが走った。
その感覚を思い出し眉を寄せる。
「そんなことよりも、デューク。お前はいい加減に任地に戻れ」
早々に話題を変えたシルバはターゲットをデュークに変える。
「あぁ、明日には戻る。王城生活はなかなか楽しかったぞ」
ククッと口元に笑みを浮かべ、そう言うデューク。
「だが帰る前にお前に話がある」
挑発的な視線を向けていたデュークが、打って変って真剣な表情で話す。
「執務室に来い」
それに一言で返すシルバ。
この二人はこのように時々視線だけで会話をする事がある。
それだけで十分に伝わるのだろう。
「お前は侍女たちと後宮へ戻っていろ」
「はい……」
冷たく言い放たれる言葉に先程の胸の痛みを思い出しつつ、素直に答える。
そして、シルバに命じられるがままに後宮へ戻った。