白銀の女神 紅の王
変化の兆し
行かせなければ良かった――――
そう思った時はもう遅かった。
エレナが目を覚ましてから数日。
普段ならば呼んでも王城になかなか現れないデュークが自ら王城に滞在していた。
その理由がエレナだと言う事も分かっていた。
デュークとは長い付き合いだがあれは相当エレナの事を気に入っている様子。
冷たいと評判の俺に対し少しは愛想の良いデューク。
しかしそれも表面だけで、中身はドライな人間だと言う事は近しい存在の者ならば知っている。
そんなデュークが一目見てエレナを気に入ったのだ。
本人は妹の様なものだと言うが…どうだか。
別にデュークがエレナの事を気に入ろうが関係ない。
終いにはエレナを城下に連れて行きたいから許可をしろというデューク。
勝手にしろ…と言えば意気揚々と出かけて行った。
しかし城下から帰って来てエレナとデュークが仲睦まじく談笑しているところが目に入り、苛々と訳の分からない感情を持て余した。
俺には愛想笑いもしない癖に…
俺の前で見せるのは怯えた表情ばかり。