白銀の女神 紅の王
本来ならばそれでいいはずだ。
エレナを縛り付けているのが恐怖でも何でも。
欲しいのはエレナが持つ“心を読む力”だけなのだから。
けれど頭ではそう思っていても、この苛立ちを抑える事は出来ない。
デュークの横で笑うエレナも。
挑発的な視線をよこすデュークも。
全てが気に入らない。
そして苛々の元凶の一つ、デュークを目の前にして口を開く。
「話と言うのは何だ?」
執務室の椅子に座り不機嫌も露わにデュークを睨みつける。
「そう怒るな。そんなに眉間にしわを寄せているからエレナにも怖がられるんだ」
“エレナ”という言葉に、眉をピクッと動かす。
「黙れ。話がそれならさっさと任地へ帰れ。俺は忙しい」
話があると重々しく言っておきながら、冗談から始まるデュークに怒りもピークに達していた。
デュークから目を離しイースト地区の再建についての書類に目を通そうと思っていた時。
真剣な顔つきになったデュークから衝撃的な言葉が告げられる。