白銀の女神 紅の王
もう一人の能力者
王城に男が侵入してから数週間後―――
あれから、何事もなく過ぎて行った日々。
ただ一つ変わった事と言えば…
シルバが毎夜、後宮へ帰ってくると言う事。
それはきっと、男を警戒しての事で。
同じベッドの上で眠ることも、段々と抵抗はなくなった。
抱きしめられて眠ったのもあの日だけだったから……
そこまで思って、顔を赤らめる。
シルバの広い胸の中。
男から逃げるために自分から飛び込んだ時は混乱していて感じなかったけれど…
外見や物言いからは想像できないほど温かい腕の中は、とても心地良かった。
抱きしめられた時に聞こえた心臓の音は、トクントクンと一定のリズムで鳴っていて。
当然だけど、シルバも人間なんだと思った。
そう感じたら、不思議とシルバの事も怖くなくなって。
あんなに怖かった紅の瞳も、前ほど怖く感じなくなっていた。