白銀の女神 紅の王
トサッ―――――
まるで壊れ物を扱うかのように、ベッドに下ろす。
そして、冷えた体を温めるために、布団を掛け、体温を分け与えるように頬に手をすべらせる。
暫くして、自分の手と同じくらいの温かさを持ち始めた頬に、ほっと安堵する。
あのまま、ソファーで寝ていたら、確実に風邪を引いていただろうな。
しかし―――――
何故、泣いていたんだ……?
原因は間違いなく自分だという事は分かる。
しかし、何が引き金になったのか。
考えられるのは、あの女の登場だろうが…
エレナにとっては、もう一人の能力者が出てきた事は喜ばしいはず。
脅して連れてこられたようなものだからな……
無意識に、頬にあてた手で輪郭をたどっていると―――
「んっ……ぃ…ゃ……。」
エレナが上げた小さな声に、咄嗟に手を引く。
起きたか……?
起こしてしまったのではないかと焦るが、エレナは身じろぎをしただけで起きる様子はない。
ほっと息をついたのもつかの間―――