白銀の女神 紅の王
また……
エレナの頬には涙がつたっていた。
寝ながら泣くなど、器用な奴だ…
内心呆れながらも、心はざわつく。
この涙は、女が関係している事は確かだ。
眉を寄せながら、エレナの頬につたった涙を拭う。
「ッ………!」
瞬間、我に返る。
俺は、何をしているんだ……
女にエレナを侮辱された時の苛立ちといい、今といい。
クソッ……
あれは、自分のモノを侮辱されたのが鼻に付いただけだ。
そして、これは……
出てこない答えに、苛立ちは増す。
もやもやと霞がかった頭の中を、振り切る様に立ち上がる。
要は、根本の原因となっている女を追い出せばよい話。
だが、今、女を王城から出すわけにはいかない……
アレを確かめるまでは……
もやもやと心が晴れぬまま、後宮を後にした。
しかし、後に、一刻も早く女を追い出さなかった事を後悔することになった――――