白銀の女神 紅の王
コンッコン――――
遠慮がちな小さなノックの後に…
「エレナ様、起きていらっしゃいますか?」
ノックの音と同じくらい小さな声。
「えぇ、今起きたわ。」
扉の向こう側にそう返事を返せば、そっと扉が開き、その人物が入ってくる。
「おはようございます、エレナ様。」
彼女らしい、いつも通りの明るい声。
けれど……
「おはよう、ニーナ。」
応えた私の声は、力がなかった。
昨日、押しやる様にニーナを追い出しただけに、目も合わせづらい。
「昨日はあまり眠れなかったようですね。……目が少し充血しています。」
ベッドの横まで来たニーナが、眉を寄せて覗き込む。
「……大丈夫、ちゃんと寝たわ。」
泣き疲れて…だけど。
ちゃんと笑えているだろうか……
いや、目の前のニーナがまた眉を寄せているから、きっとちゃんと笑えていないのだろう。