白銀の女神 紅の王
1章 心読める少女
二人の買主
大通りから外れた路地裏の一角。
そこに本来ならば酒屋を生業としている店がある。
日中でも人が寄りつかなそうな外観のその店。
しかし皆が寝静まる夜中、その酒屋の地下は異様な熱気に包まれていた。
ガハハハ――――
蝋燭の光だけで照らされた薄暗い部屋に響く下品な声。
むせ返りそうなほど部屋に充満している酒の匂いと煙草の煙。
部屋にはいくつかのテーブルが置かれ、それを囲むようにして人々が座っている。
そして、男たちの隣には艶やかな女たちが寄り添う様にして座る。
テーブルの上に置かれているのはカードと積み上げられたお金。
人々はギラつく瞳でそれらを見つめている。
そう…ここは闇の賭博場。
毎夜開かれるその賭けごとは国から違法とされているものだ。
しかし、一攫千金を期待して集まるものは少なくない。
少々のリスクを冒しても金持ちになりたいという欲を抑えられずに来る者たちばかりだった。