白銀の女神 紅の王
危険を顧みず、取りに戻ったと言う事は、重要なものと言うことか。
見てみる価値はあるな……
「ご苦労だった。下がれ。」
「はい。失礼致しました。」
そう言って、自室へ帰っていくニーナを見送った。
パタンッ――――
誰もいない後宮に足を踏み入れる。
月明かりが照らす、静かな後宮。
『お帰りなさい。』
いつもそう言って迎える存在は、今はいない。
ベッドに座れば、明らかな違和感を感じる。
今まで、一人ですごしてきたにもかかわらず、今日初めて、このベッドが広く感じた。
チッ………
一瞬浮かんだ、エレナの姿に、何故か苛々とする。
そして、右手に持った封筒に目をやる。
あの女、何故これを取りに戻ったんだ……?
訝しく思いながらも、封筒を開けば――――
「ッ………!」
書かれていた内容に、息を飲む。
“シルバへ…
お金は必ず返します
エレナ“
それは、エレナからの手紙だった。