白銀の女神 紅の王



危険を顧みず、取りに戻ったと言う事は、重要なものと言うことか。

見てみる価値はあるな……



「ご苦労だった。下がれ。」

「はい。失礼致しました。」

そう言って、自室へ帰っていくニーナを見送った。






パタンッ――――

誰もいない後宮に足を踏み入れる。

月明かりが照らす、静かな後宮。




『お帰りなさい。』



いつもそう言って迎える存在は、今はいない。

ベッドに座れば、明らかな違和感を感じる。

今まで、一人ですごしてきたにもかかわらず、今日初めて、このベッドが広く感じた。


チッ………

一瞬浮かんだ、エレナの姿に、何故か苛々とする。



そして、右手に持った封筒に目をやる。

あの女、何故これを取りに戻ったんだ……?

訝しく思いながらも、封筒を開けば――――



「ッ………!」

書かれていた内容に、息を飲む。




“シルバへ…
    
   お金は必ず返します

          エレナ“



それは、エレナからの手紙だった。



< 305 / 531 >

この作品をシェア

pagetop