白銀の女神 紅の王
すぐ後ろには、息子のロメオもいた。
「なぜ、貴方がここに?」
黒いマントを羽織った者達の中心に立つ人物を、呆然と見上げる。
怪しい人たちの中心に、国王の家臣。
とても違和感を感じる光景だった。
しかし、フォレスト伯爵は、怪しい風貌に相応しいくらいの笑みを浮かべ、口を開く。
「私がいてはいけませんかな?」
ニヤリと笑うその表情は、宴の時のあの粘着質な笑みを思い出させる。
「だって、この人たちは人攫いを……。」
黒いマントに、顔を隠すようなフードを被る男達。
まるで、世間とはかけ離れるこの状況は、どう見てもフォレスト伯爵が登場する場面ではない。
普通ならば、ここは………
「ッ……まさか……。」
頭のどこかで感じていた不安が零れる。
そうであってほしくない……そう思った。
しかし―――――
「その、まさかですよ、エレナ様。」
ゆっくりと。
しかし、重低音で耳に届く声は、ハッキリと聞こえた。