白銀の女神 紅の王


「私こそ、このアーク王国の国王に相応しい人間なのです。」

フォレスト伯爵は、自分自身に心酔しきった様子で喋り続ける。




「けれど、今の国王はシルバだわ。」

自分の口から出たとは思えない言葉。

ましてや、両手足を縛られているこの状況で、よく言えたと思う。


けれど、ハッ…と、気付いた時には口を開いていた…



「えぇ、残念ながら。」

良かった………

心の中で、ほっと一息つく。

後先考えず出た言葉に焦ったが、幸か不幸か、フォレスト伯爵の怒りは、買わずにすんだようだ。





「現国王はシルバ様ですが、私はあの男から王位を奪いますよ。その為に、エレナ様。貴方の力が必要です。」



「私の…力………?」


“力”という言葉にピクッと反応する。

途端、頭の中で警鐘が鳴り響く。



そんなはずない……と。

フォレスト伯爵が、知っている筈がない…

否、どうか私の嫌な予感が当たりませんように…という願いでもあった。



< 312 / 531 >

この作品をシェア

pagetop