白銀の女神 紅の王
「私こそ、このアーク王国の国王に相応しい人間なのです。」
フォレスト伯爵は、自分自身に心酔しきった様子で喋り続ける。
「けれど、今の国王はシルバだわ。」
自分の口から出たとは思えない言葉。
ましてや、両手足を縛られているこの状況で、よく言えたと思う。
けれど、ハッ…と、気付いた時には口を開いていた…
「えぇ、残念ながら。」
良かった………
心の中で、ほっと一息つく。
後先考えず出た言葉に焦ったが、幸か不幸か、フォレスト伯爵の怒りは、買わずにすんだようだ。
「現国王はシルバ様ですが、私はあの男から王位を奪いますよ。その為に、エレナ様。貴方の力が必要です。」
「私の…力………?」
“力”という言葉にピクッと反応する。
途端、頭の中で警鐘が鳴り響く。
そんなはずない……と。
フォレスト伯爵が、知っている筈がない…
否、どうか私の嫌な予感が当たりませんように…という願いでもあった。