白銀の女神 紅の王



まだ、体はカタカタと震えていた。

しかし、いつまでもここには居られない。

ロメオが席を外させた部下たちが戻って来るまでに、ここを出なきゃ。

この状況から脱出する事だけを思い、乱れた衣服を整え、立ち上がる。

そして、うつぶせで横たわるロメオの腰にあった短剣を持って、小屋を出た―――





夜の森は予想以上に怖い。

周りは灯り一つなく、真っ暗。

それを、当てもなく歩くのは危険だ。



確か…フォレスト伯爵はギルティス王国へ連れて行くと言っていた。

そして、そのギルティス王国は、イースト地区と接する国。

ということは、今はアーク王国の東部にいることになる。

ならば、迷う事はない。

西へ向かえばいいのだ。



星空を見上げ、星々の位置の導くままに、進むべき方向を定め、歩き出す。






しかし、数十分後――――



「っ………はっ…ぁ…。」


グラッ…と視界が揺らぎ、木にもたれかかる。

この症状は、先程のロメオと同じ。

私もまた、あの睡眠薬を少し嗅いでしまったようだ。



ここで意識を失うわけにはいかない……

私は帰るんだから……



そう強く言い聞かせ、ロメオから奪ってきた短剣を手にする。



そして、その短剣を腕にあてがい……―――――



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