白銀の女神 紅の王
国境線の攻防
エレナが王城から消えた翌日の朝―――
王直属騎士団を加えた国王軍が、イースト地区に接するギルティス王国との国境へ向かうべく、馬を走らせていた。
チッ……―――
馬を走らせながらも、後ろに続く者たちを一瞥し、心の中で悪態をつく。
それが無意識のうちに表に出ていたのか…
「シルバ、どうしたんですか?」
横で馬を走らせていたウィルが、訝しげな視線をこちらへ向ける。
「こんなにも軍を引き連れる必要があったか?」
ウィルの問いに、苛々としながら答える。
「ギルティス王国との国境といっても広いですし、広範囲に布陣を引く事を考えてのことです。」
チッ……―――
こうものろのろと馬を走らせていては日が暮れる。
引き連れる軍が多ければ多い程、速度は落ちる。
しかし、ウィルの言うことにも一理あるのは確か。
ギルティス王国との国境はイースト地区全体に及ぶほどに広い。
フォレストが、そのどこからギルティス王国へ逃亡を謀るかは、分かっていない。
「大体予想できないのか。」
焦燥感から、そう口に出せば、同じく横で馬を走らせていたデュークが口を開く。