白銀の女神 紅の王
「ギルティス王国との国境付近は、狩りの際に使う小屋が密接しているからな。昨夜はどこですごしたのやら…。」
イースト地区にあるギルティスとの国境付近は、狩りには絶好の場所で、休憩所に使われる小屋が多くある。
エレナが攫われた時間から計算して、フォレストたちも昨夜は必ず足止めをくらっている筈だ。
そして、イースト地区の何処かの小屋で一晩を過ごしたのは確実。
「フォレストが以前に使ったことのある小屋はないのか?」
「それらしき当てはありません。そもそも、フォレスト伯爵は狩りをしませんからね。」
ウィルが応える。
手掛かりはなしか……
しかし、そうなると可能性は一つ。
「国境を超えるとすれば、警備の行き届かない場所だろうな。」
さすがに鋭いデューク。
いつもフラフラと王城に来ては、人を散々けなして帰る人間だが、本来の職は国境付近の警備。
いい加減に振る舞っていても、きっちり仕事はこなしていると言うことか。
「警備の薄い場所は、同時に土地構造が複雑な所ですね。」
そう……
恐らく、フォレストは警備の甘い所を狙うだろう。
すると、フォレストが逃亡を図ろうとしているルートがおのずと見えてくる。
「イースト地区北東部。」
そう呟けば、コクリと頷くウィルとデューク。