白銀の女神 紅の王



否、都合の良い夢なのだ。

シルバが、私を追って来てくれたのは、能力者としての私が必要だから。

そして、イザベラさんが敵だと分かった今、再び私を“能力者”として引き戻そうとしているのだ…



そう……

シルバは、私が必要なんじゃない……



“人の心を読める”能力を持った私が必要なのだ。




けれど…


私には、もう能力はないの……

貴方の為に、何一つ役立てる事はないの…

私は、貴方の傍にいられる、たった一つの資格を失ったのだから。



だからこそ、貴方が手を差し伸べてくれた時、私は迷った。

その手を取っていいものか……と。


けれど、手を差し出してくれたその瞬間―――

小さく芽生えた欲に、抗う事は出来なかったの…

どんな形でも貴方の傍にいたい…

気付いた時には、手を取っていた。



苦しいくらいに胸を締め付ける後ろめたさを感じながら……



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