白銀の女神 紅の王
フォレストは恐らく、俺が一人の今を絶好の機会だと思っている様だが…
所詮、剣を持って振るだけしか能のない雇われ兵士。
数だけの烏合の衆に、負ける気はしなかった。
いつもなら………
キーンッ―――――
ガンッ――――――
向かってくる相手を一人一人、確実に倒していた時だった。
途端、耳に入って来た小さな悲鳴に、反射的にその方向を向けば…
ジェスに捕まったエレナ。
不意をつく様に、振るわれた剣に、一瞬反応するのが遅れ……
シュッ……――――
頬の表面を切った。
寸でのところで交わせると思ったが、頬の傷くらいなら合格だろう…
滴る血が地面に染みを作るのを眺めながら、そんな事を考えていれば―――
「シルバッ!」
エレナの焦った様な声。
俯いた俺の横で、ジリッ…と地面を踏みしめる音がしたかと思えば…
「シルバッ!」
今度は、悲痛な声が入り混じったエレナの声が耳に入る。
そんなに、何度も叫ばずとも、分かっている。