白銀の女神 紅の王



ニーナの前で見せる笑顔でもない。

ウィルやデュークに見せる笑顔でもない。

そこには、今まで見た事ないエレナの笑顔があった。




儚げで……

けれど、ハッとするような美しさを湛えた笑顔。



それを捉えた瞬間に感じたのは、まぎれもない“喜び”

そして、同時に感じた“苛立ち”




何故………


完全に体から力の抜けたエレナを支え、強く抱きしめ…




喜びよりも勝っていた、苛立ちの感じるままに口を開く―――




「何故だ……何故こんな事をした!」

意識の混濁するエレナに、声を荒げる。



エレナが俺を庇う理由などどこにもない筈だ。

憎まれる事はあっても……






エレナの言葉を待っていれば―――



「あ…なた……が………」


俺が………?



続くエレナの言葉を待つが……

途切れた言葉は続く事はなかった―――



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