白銀の女神 紅の王



コトン……と、体を預ける様にして頭を肩口に埋めたまま、ピクリとも動かなくなったエレナ。



途端、不安にかられ、体を離せば――




「ッ………!」

固く瞳を閉じ、綺麗な眉を寄せて苦しそうにしているエレナ。

顔色は真っ青で、指先から伝わる体温は、みるみるうちに低くなっていく…






「エレナッ!」


強く名を呼んでも、眉をピクッと寄せただけで、目を開こうとはしない。

くにゃりと力が抜けるエレナの体を地面に下ろし、ザッとエレナの様子を見る。

背中で庇ったエレナに、深々と刺さっている矢。

右肩の裏辺りに刺さった矢は、急所から外れて刺さっていた。

その為か、出血の量も少ない。




しかし……―――

痛がるそぶりも見せず、ただ眉を寄せ、ピクリとも動かない。

こんなにも深く刺さっていれば、苦痛で痛みを伴う筈だが…

エレナは、ぐったりとして動かない。

吐きだされる息が荒いのは、腕の傷が原因ではない事は明らかだった。




何にしても、早く矢を抜かなければ傷口が塞がってしまう。






< 392 / 531 >

この作品をシェア

pagetop