白銀の女神 紅の王
コトン……と、体を預ける様にして頭を肩口に埋めたまま、ピクリとも動かなくなったエレナ。
途端、不安にかられ、体を離せば――
「ッ………!」
固く瞳を閉じ、綺麗な眉を寄せて苦しそうにしているエレナ。
顔色は真っ青で、指先から伝わる体温は、みるみるうちに低くなっていく…
「エレナッ!」
強く名を呼んでも、眉をピクッと寄せただけで、目を開こうとはしない。
くにゃりと力が抜けるエレナの体を地面に下ろし、ザッとエレナの様子を見る。
背中で庇ったエレナに、深々と刺さっている矢。
右肩の裏辺りに刺さった矢は、急所から外れて刺さっていた。
その為か、出血の量も少ない。
しかし……―――
痛がるそぶりも見せず、ただ眉を寄せ、ピクリとも動かない。
こんなにも深く刺さっていれば、苦痛で痛みを伴う筈だが…
エレナは、ぐったりとして動かない。
吐きだされる息が荒いのは、腕の傷が原因ではない事は明らかだった。
何にしても、早く矢を抜かなければ傷口が塞がってしまう。