白銀の女神 紅の王
フォレスト親子の前に立つジェス。
「邪魔だ……どけ。」
まるで覇気のない視線で、こちらを見据えるジェスを睨む。
そのスカイブルーの瞳にちらつく迷い。
剣の切っ先はこちらに向いていたが、まるで殺気が感じられなかった。
戦意のない者に、剣は振るわない主義だが…
今まで、何食わぬ顔でエレナを騙し続け。
平然と裏切ったこいつを目の前にして、湧き立つ怒りを抑える術はない。
しかし――――
「いいぞ、ジェス。そのまま、そいつの足止めをしろ。」
つい数十分前までは余裕の表情をしていたフォレストも、今は額に汗を浮かべて、顔を引き攣らせている。
追いつめられたフォレストがとった行動は、部下を盾にして逃げを取る事だった。
ロメオを引き連れ、向かったのは、馬が繋がれている場所。
つくづく落ちた奴だ……
これで、ジェスを相手にするわけにはいかなくなった。
フォレストだけは逃がすものか…
フォレスト親子の後を追い、動けば――
「待てッ!」
制止の声に、苛立ちを隠すことなく睨みつける。
「ッ……ここから先は行かせない。」
剣を構えたジェスが、立ちふさがった。