白銀の女神 紅の王
このままでは取り逃がす―――……
考えがよぎった瞬間、体は反射的に動いた。
走るフォレストたちの背を追いながら、落ちていた太い木の棒を取り…
ブンッ――――
馬に足をかけようとしているフォレストめがけて、思い切り投げた。
空を切った音と共に、ヒュンヒュン…と音を立て、棒が飛んで行ったのは、フォレストたちではなく…
ガツッ――――
投げた棒は見事、馬の脚へ直撃した。
瞬間、馬は突然の衝撃に、鳴き声を上げながら、前足を上げて胴体を反らせる。
「ッ…クソッ……ぐはッ!」
「父上ッ!」
フォレストは手綱を操るが、興奮した馬を抑える事は出来ず…
ドンッという鈍い音をたて、フォレストは地面に振り落とされた。
「これで、逃げ場はなくなったぞ。」
ロメオがフォレストに駆け、抱き起したと同時に、剣を突き付ける。
背中から地面にたたきつけられたフォレストは、痛みに顔を歪ませながら、こちらを仰ぎ見る。
「よくもッ……くッ……。」
怒りにまかせた言葉は、喉元に押し付けた剣によって途切れた。
「よくも……何だ?」
冷ややかな声が、口から零れる。