白銀の女神 紅の王



シルバのものとは思えないほど優しい言葉と優しい手。

これら全ては、今の私に向けられたものではない。

人の心が読める能力を持った私に…だ。


だから、私はそれを受ける事は出来ない。

受ける資格もない……




だって…まだ私は能力を取り戻していないのだから……




髪を梳く優しい手が、苦しい程に切なかった。





ギュッと服を掴み、顔を埋め―――


「フォレスト伯爵は捕まったんですか?」

話題を変えた。



「あぁ。」

当然の様に答えるシルバ。

それじゃあ………



「ジェスも……?」

シルバの胸に顔を埋めたまま、恐る恐る問う。



すると――――

「………あぁ。」

僅かな沈黙の後、先程よりも低い声で返って来た返事。

私はそんなシルバの変化に気付く事なく…



「そう…ですか……」

牢屋に捕まっているであろうジェスを思い浮かべ、そう呟いた。





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