白銀の女神 紅の王
まだ……寝ている?
規則正しく聞こえてくる吐息に、一定のリズムを刻む心音。
こんなの初めて……
今まで、このベッドで一緒に眠る事はあっても、朝はいつも一人だった。
こんな風に、シルバの寝顔を見るのは初めてだわ。
綺麗な顔……
シルバが寝ているのを良い事に、その顔をまじまじと見る。
スッと通った鼻筋に、綺麗な眉、切れ長の目。
ルビーを思わせる紅の瞳は、瞼の向こう側。
シルバの寝顔は穏やかで、とても噂のシルバとは違った。
冷徹で冷酷で、恐れる者には容赦ない者。
ピタッ――――
死にかけておかしくなったのか、ふと、いつにない行動を取った。
シルバの頬にかかった漆黒の髪をわけ、その頬に触れる。
すると――――
「ッ………」
シルバはピクリと動き、小さく声を上げる。
起きるかと思ったけれど、一度眉を寄せただけで、後は何の反応も示さなかった。
とても疲れていたのね……
シルバの向こう側に見える書類の束。