白銀の女神 紅の王



ギシッ―――――


それに手を伸ばそうと、身を乗り出した時だった。



パシッ―――――

下から伸びてきた手に腕を取られたかと思うと、グラッと視界は反転した。




「きゃっ……!」

勢いよく引っ張られた体を大きな手が受け止め、柔らかなベッドにフワリと下ろされる。

背に感じる温もりは、それまで誰かがそこにいた事を示していて…

その誰かは、今、私を見下ろしていた。



「シルバ……」

驚いた表情で、ベッドに私の手を縫いとめている者の名を呟けば…

明らかに機嫌の悪い表情を返される。

それは、寝起きの機嫌の悪さとは違うものだった。



「どこへ行くつもりだった。」

寝起きだと言うのに、ハッキリと通るテノールの声が、そう言う。

少し声が低いのは、やはり不機嫌だからだろう。

その声に、ビクッと体が震えるが、恐怖ではない…



「ど、どこも……。ただ、あの書類を取ろうとしただけです。」


正直に答えれば、チッ…と舌打ち、ばつの悪そうな顔をする。

ボソッと、まぎらわしい真似を…と言いながら、手の拘束が緩んだ。


誤解が解けた事にほっとしたのもつかの間。



フワッ―――――

シルバは、力が抜けるように、私の方へ覆いかぶさる様に倒れてきた。



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