白銀の女神 紅の王
2章 束の間の安息
王の側近
宴の日の翌日―――
シャッ……
シャッ……
異様な静けさと緊張に包まれた執務室では、荒々しく書類にサインをするペンの音だけが響いていた。
ただ黙って不機嫌そうに書類にサインをする音に家臣は怯えるばかり。
書類に自分のサインがあるのを確認すると、皆長居は無用とばかりにそそくさと執務室を出て行く。
先程から続くその光景にソファーから見守っていたウィルが深いため息をつき口を開く。
「シルバ…その不機嫌な顔どうにかなりませんか」
「何?」
声はいつになく低く響き、書類を持った家臣の体も強張っている。
部屋への訪問者はその家臣が最後だったので非常に居ずらいのだろう、先程から目線は床に向いている。
それを見てウィルが再び溜息をつき、その家臣を部屋から下がらせた。
「貴方が不機嫌な顔をしているから家臣たちが怯えています。後からとばっちりをくらうのは僕なんですからね」
家臣がドアを閉めたのを確認して、ウィルが不満げに言う。