白銀の女神 紅の王
「それ認めているようなものですよ」
ウィルは自分から視線を外さず呆れた口調で言う。
「もうあの頃と違うんですよ?」
「………ッ」
それまでの諌めるような声色とは違う、優しくなだめるような彼本来の声色でそう言われ、軽く目を見張り息を飲んだ。
“あの頃”
それだけで通じてしまうのは、それだけ自分たちの中に未だ大きく圧し掛かっているものだからだ。
何年たっても鮮明に残っている記憶を思い出せば、忌まわしい過去が思い起こされる。
「貴方はこのアーク王国の王になったんです。貴方には力があります。権力があります。だから……もう、いいんじゃないんですか?」
「それとこれとエレナは関係ない」
投げ捨てるように言えば、すかさずウィルが口を開く。
「関係ない?ではなぜ昨日から機嫌が悪いんです?」
こうなったウィルは引かない事を知っている。