ナンパ男との恋2
輝樹の両肩から
背中にかけて
大きく、
川から
魚が飛び跳ねている景色が
描かれている。

「痛そう・・・・」

「入れた時は痛かったけどな。
高熱は出るは
風呂なんて 水風呂しか入れなかったし。」

「いつ入れたの・・?」

「いつだっけな・・・
6年ぐらい前か。
俺の先輩が
彫り師だったんだけどな、
これ彫って、
1ヶ月くらい経った頃
いなくなっちまって・・」

「いなくなったの?」

「あぁ、死んじまった。
だから、これ
途中までしか描かれてねぇんだ。
色もついてねぇだろ?
まぁ、最後の作品ってやつだな」

そう言われてみれば
絵が描かれてるだけで
色は入ってない・・・・

「何で、そういう事なら
私に隠す必要ないじゃん・・」

「俺さ、これ入れてから
本気で付き合った女いたんだけどな・・・
これ見られたら
そっこー振られた。あははは
まぁ、普通に考えたら
当たり前なんだけどな~」

そう笑いながら話す輝樹が
どこか 無理してるようで
愛しくなって
思わず 抱きしめた。

「こんなの、
別れる原因にすらならないよ・・」

「・・・ごめんな?」

「ううん・・・
こんな事なら
早く言ってよ・・
変な心配ばっかりしたんだから・・」

「春菜にまで逃げられたら
さすがに 俺でも
立ち直れない気がしてな・・・
ごめんな・・・」

いつもと全然違う態度の輝樹を前にすると
どれだけ 自分が愛されてたのかって
不思議なくらい
胸に響いてくる。



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