俺とあいつ
「失礼します」
「うん」

おどおどと玄関先でパンプスを脱ぐ死神女。今時なぜこんなおばちゃんの靴が流行るのか俺には全く理解できない。そういえばバイト先のお姉さんもこんな靴履いてたな──

「あの?」

ぽけっ、と立ち尽くす俺の顔を死神女が怪訝そうに見つめていた。

「あ、こっち」
「す、すみません」

パタパタ─

3LDKの独りの部屋に響く他人の足音。ここに住んでもう五年。独りに慣れすぎたからか、その足音が何故か心地よかった。




「へぇ……ずいぶんとさっぱりしてるんですね」

ソファにもたれかかるように座り、キョロキョロと部屋を見回す。
「あ、かわいーっ」

ペンギンのぬいぐるみを抱き締める。

「あ、この本読んだことありますよ!」

テレビ台に立て掛けられていた本を手に取り─

「遊びに来たのか?」

バイト疲れとその休息を妨げる無邪気な「それ」にイライラが湧き、それがつい口を伝ってしまった。

「あ、ご、ごめんなさい!」

驚き開かれた手から本が落ちた。

「すみません……私、人の家にお邪魔するのなんて久しぶりで……不躾でしたよねこんなこと」
「……いや、いいんだ。ごめん俺の方こそ」

俺はソファに座り込んだ。机を「コ」の字に
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