___死神だ」
 ーー返して。お願い、返して。

 私は、すすり泣く様にして言った。いや、正確には言った訳では無いが、その人には伝わっている筈だ。

 その人は、右手をぶんぶんと降り続けている。

 私は、仕方が無いから泣いた。
 ああ、顔が無い時に泣くのは、こうしたらいいんだと、一人で思った。
 ほら、こうして、こうすれば、いいんだ。ほら、私は泣いている。


 ーーあなたは、私なの? 

 泣きながら、私は尋ねた。
 その人が降り続ける右手は、止まらない。

 じゃあ、何だと言うのだ。何だと言うのだ。
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