天使と悪魔~2つの顔を持つ男~

あの衝撃から一夜明け、講習2日目。




奇しくもその日は数学の講習だった。


千里は授業を受けるどころが、緒方すら見る事が出来なかった。




昨日の緒方の姿があまりにも衝撃的過ぎて、

今目の前でいつも通りに勉強を教える姿が全くの別人に見えたのだ。





結局授業に身が入る事なく、講習は終了した。






千里は複雑な心境のまま1日のスケジュールが終わり帰ろうとした時、
校内のアナウンスで生徒の呼び出しがかかった。





『2年A組桜井さん。会議室まで来てください』





その声に千里は鳥肌が立った。


そして心臓が激しく鼓動し始める。





「……」





正直千里は迷っていた。

きっと昨日の事で話があるはず。





だが名指しで自分を呼ぶのは大好きなあの先生…。





千里の心とは裏腹に足がゆっくりと動きだす。

まるで操り人形のように。




見えない糸で引き寄せられる先に待つのは、悪魔か天使か――――。









「待ってたよ」


緒方は眼鏡を外し、

きっちり上まで締めたネクタイを長い指先で緩める。






「何か……、用ですか?」

手に汗握りながら恐る恐る聞く千里。
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