天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
夕方買い物を終えた緒方の車は高層マンションの駐車場に止められていた。
その最上階に緒方の自宅はあった。
「広い……」
まるでモデルルームのような広さとデザイン性に溢れた家具。
余計な物が置かれていないせいか、
とてもシンプルでなおかつスタイリッシュに見える。
緒方の自宅に入る事でさえ驚きなのに、
目の前の光景を見た途端、千里は呆然と立ち尽くしてしまうほどだ。
「教師ってそんなにお金いいんですか?」
「たいしたことねぇよ」
緒方は荷物を棚へ片付けながら淡々と作業を進める。
そうなんですか?と半信半疑になりながらも、
緒方がいるダイニングキッチンへ向かう千里。
「桜井、晩飯どうすんだ」
「あ……、何も考えてないですけど」
そう言うと、棚からフライパンを取り出しコンロの上に置いた緒方。
「付き合ってくれた礼に、俺が特別ご馳走してやるぜ」
くわえ煙草でニッと笑ったその表情に、
千里の胸は熱く燃え上がった。
教師でいる時は常におおらかで柔らかい雰囲気なのに、
普段は真逆な性格を持つ緒方。
だがどちらも魅力的で、千里の心は以前よりも数段に囚われていた。