天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
秋空の下にある進学校。
ハイレベルな授業内容と教師の徹底的な教育指導。
卒業生の8割は有名大学へ進み、その他の生徒も一流企業の就職が内定されているのだ。
――……
とある教室。
ずらっと並んだ机に座る男女の生徒達。
皆、教壇に立つ教師の話しに耳を傾けながら、
集中して黒板に書かれた内容を必死にノートに写す。
シーンと静まり返った室内に響くのは、
カリカリとシャーペンが動く音と授業を教える教師の声――。
「……それじゃ、今日はここまで」
校内に響くチャイムの音に教師が自分の教科書を閉じた。
それと同時に静寂だった教室は一瞬で緊張が溶け、一気に騒がしくなった。
「先生っ」
その時2人の女子生徒が甘える声で教師に近寄ってきた。
「今日の放課後、わからない問題を教えてもらいたいんですけど……」
頬を赤く染め上目使いで話す女子達に、
教師はノンフレーム眼鏡の奥で目を細めながら申し訳なさそうに笑う。
「申し訳ありません、放課後は別の仕事があるんです」
優しく話す口調はとても温厚な性格を物語っている。
「また別の機会に」
そう言って満面の笑みを2人に向けて、教室を後にした。
眩しいほどの微笑みは女の心をガッチリとわしづかみ、
頼み事を断られた事よりも、
自分達に為だけに向けた笑顔に女子は嬉しそうにはしゃぐ始末だ。
「……」
そんな様子を自分の席から遠く眺める女子。