天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
「桜井さん」
その日の昼休み、千里はクラスメートから呼ばれた。
「あの先輩呼んでるよ」
教室の扉まで呼び出された千里にクラスメートが1人の生徒を指差す。
――ドクンッ!
千里はその生徒を見た途端、全身の血の毛が一気に引く感覚を覚えた。
忘れもしないあの人の顔。
少し離れた場所にいる相手は険しい表情で千里を見つめている。
「……」
手に汗をかき目を泳がせながらも、
千里は相手に近寄って行く。
「話があるの。着いてきてくれる?」
生徒は淡々とそう話し、
千里に背を向けて廊下を歩き始めた。
その後に続く千里。
話したい事は検討ついていた。
自分と相手を繋ぐ接点、それが緒方である事も。
誰もいない裏庭。
空には真っ青な空間に白い曇が心地良さそうに浮かんでいる。
「あのさ、貴方と緒方先生ってどういう関係なの?」
――やっぱり……。
想像していた質問に千里は小さく息を吐いた。
「ってか、貴方にあの現場見られてすぐ捨てられたの。もうお前はいらないって……」
相手の顔がどんどん険しくなっていく。
「どうやってたぶらかしたのよ!お前は特別だって先生、いつも言ってくれてたのに!」