天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
その言葉に千里は絶句した。
‘特別’
自分にも同じ言葉を伝えていた緒方。
もしかして特定の人間だけではなく、
自分の手元に置く人間全てに言っているのでは……!
「どうせ貴方にも似たような事言ってるんでしょ?そうやってあの人の言いように使い回されてるだけなんだから!」
涙目でキッと睨み、
生徒は千里の横を駆け足で走り去って行った。
「……」
予想を超える相手の言葉に千里は暫く放心状態だった。
‘うまく使い回されてる’
‘似たような事’
相手の言うフレーズが痛いぐらい当たっていた。
たしかに自分は緒方のいいなりに近いような存在。
彼が白と言うなら白。
黒と言えば黒だと素直に従ってきた。
それは緒方自身が千里に有無を言わせなかったからだ。
逆を返せば、
自分はただ緒方の手の平で転がされているだけで、そこには感情ではなく、
単なるコマのようなちっぽけな道具に過ぎないんじゃないだろうか。
自分は緒方に恋しているから、それでもいいと我慢できた。
だが、愛しているからこそ誰かと一緒にされたくない。
道具なんかになりたくないと思った。