天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
しかし改めて事を考えてみると、
緒方は自分の思いを利用したのかもしれない。
ファーストキスも処女も全ての初体験は緒方が奪っていった。
それが嬉しかったのに、
今はただの道具扱いでしか側にいられない自分が惨めで仕方なかった。
「そんな……」
千里は思わずその場に座り込み落胆してしまった。
きっとあの生徒のように遅かれ早かれ使い捨てられる。
緒方から見て千里は、
何の感情も抱かないただの道具でしかないのだから。
「……」
ガックリと肩を落とす千里を建物の陰から見つめニヤリと笑うのは、
先程走り去っていった女子生徒だった。
――放課後。
緒方はいつもの場所で千里を待っていた。
だがいつになっても来なければ、メールの返事すらよこさない。
「ったく、何してんだアイツはよ」
苛々しながら新たに煙草を吸いはじめる。
ガチャ…。
その時、漸く扉が空いて人物が会議室に入ってきた。
だが、その姿を見た緒方は眉間にシワを寄せた。
「先生、あの子は来ないよ」
そう言ったのは先程の女子生徒。