天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
「ぁあ?てめぇ何しに来た」
「何しにって……。1つしか無いじゃん」
生徒はニッコリ笑って緒方に近づくと、
テーブルの上に座って足を組んだ。
「私の方が先生を満足させられる自信あるよ?だから昔みたいに……」
「――帰れ」
誘うように甘い口調で言った生徒を緒方は一言で突き放す。
「用済みには興味ねぇんだよ」
回転イスにもたれ掛かりながら白い煙を吐く緒方。
「だってあの子より絶対セックス上手いし、先生だって私の事特別だって言ってくれたじゃん!」
つい声を荒げた生徒を、緒方は冷たい目で見つめた。
「桜井はどこだ」
「……知らない」
「嘘つくな。てめぇがアイツに何か吹き込んだんだろうが」
「……」
緒方の鋭い指摘に生徒は気まずそうに目線を落とした。
「お前とはもう終わってんだよ。今頃になってノコノコ出てくんじゃねぇよ」
そう投げ捨てるように言うと、
緒方は椅子から立ち上がり眼鏡をかけて着衣を整え始めた。
「先生!」
そして生徒の必死の呼びかけに応える事なく部屋を去って行く。
最後、扉のドアノブに手をかけた時、緒方は一瞬だけ後ろを振り返った。
「さようなら、お元気で」
そう言って天使のように笑うと、
愕然とした生徒を残したまま部屋を出たのだった。