天使と悪魔~2つの顔を持つ男~

「ぁあ?てめぇ何しに来た」

「何しにって……。1つしか無いじゃん」



生徒はニッコリ笑って緒方に近づくと、

テーブルの上に座って足を組んだ。






「私の方が先生を満足させられる自信あるよ?だから昔みたいに……」

「――帰れ」





誘うように甘い口調で言った生徒を緒方は一言で突き放す。






「用済みには興味ねぇんだよ」


回転イスにもたれ掛かりながら白い煙を吐く緒方。


「だってあの子より絶対セックス上手いし、先生だって私の事特別だって言ってくれたじゃん!」





つい声を荒げた生徒を、緒方は冷たい目で見つめた。






「桜井はどこだ」

「……知らない」

「嘘つくな。てめぇがアイツに何か吹き込んだんだろうが」

「……」





緒方の鋭い指摘に生徒は気まずそうに目線を落とした。




「お前とはもう終わってんだよ。今頃になってノコノコ出てくんじゃねぇよ」




そう投げ捨てるように言うと、

緒方は椅子から立ち上がり眼鏡をかけて着衣を整え始めた。






「先生!」





そして生徒の必死の呼びかけに応える事なく部屋を去って行く。




最後、扉のドアノブに手をかけた時、緒方は一瞬だけ後ろを振り返った。






「さようなら、お元気で」



そう言って天使のように笑うと、
愕然とした生徒を残したまま部屋を出たのだった。
< 28 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop