天使と悪魔~2つの顔を持つ男~

「いいか?2度言わないからしっかりと覚えておけ」



緒方はそう言って、
千里を思い切り抱きしめた。




「お前は俺にとって欠かせない人間だ。だから一緒手放すつもりはねぇ」





力強い腕の中で聞こえた声は千里の心の靄を一瞬で晴らした。






「……好きになっちまったんだよ、お前の事が」


恥ずかしそうに囁く緒方の顔はほんのり赤く染まっている。




「嘘……」

「こんな下らない事で嘘つけるか、バカ」




思わず耳を疑ってしまいそうな愛の告白だが、本人は大まじめらしい。





「これからは俺の言った事だけ信じていればいい。それが出来るなら、命張ってでもお前を一緒守ってやる」





顔を上げて緒方を見上げる千里に、

緒方は真剣な表情で言った。




「……出来るな?」





その言葉に千里はコクンと小さく頷く。


もちろん自分の意思で。





「ったく、世話の焼ける女だな」

「~っ!」






あまりの嬉しさに千里は緒方の胸を借りて大泣きしてしまった。



まさか相手が自分を思ってくれていたなんて、想像出来なかったからだ。






「おいおい、そんなに泣くのは早えんじゃねぇか?」

「え?」

「お前が泣くのはここじゃなくて、アッチ」







緒方はそう言ってベッドルームを指差した。
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