天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
放課後。
学校の校庭では部活に励む運動部の生徒達。
ひんやり冷たい秋風をものともせず、半袖で走り回っていた。
「……」
千里はとある教室の扉の前に立っていた。
騒がしい廊下には下校途中の生徒達が引っ切り無しにに行き交う。
緊張した面持ちのまま、
‘会議中’とかかれた札を気にかける様子もなく扉をゆっくり開けた。
ガランとした広い会議室。
普段は教師達や生徒会などで使う場所であり、
何も属していない千里には無関係の部屋。
千里は部屋にはいるやいなや、手慣れた手つきで教室の鍵を閉める。
そして目線を部屋の中心部に向けると、
そこには1人の男が組んだ足を長い長方形の机に乗せ、開店椅子に座っていた。
「おせぇぞ」
「……すみません」
男の低くて太い声。
千里は顔を赤くしたまま俯いて話す。
室内では禁止されている煙草を悪びれた様子もなく吸い、
ワイシャツの第2ボタンを外した上から緩めたネクタイを締めている男。
前髪は目にかかるほど長く、
毛先は無造作に跳ねた髪型だ。
「何突っ立ってんだ、こっち来いよ」
男は切れ長の目で千里を見つめると、顎を使って自分の方へ向かわせる。