天使と悪魔~2つの顔を持つ男~
ゆっくりとした足どりで千里は男に近寄った。



「お前、授業終わってから俺の事ずっと見てただろ?」

「……っ!」



男は足をテーブルに乗せ、浅く椅子に座ったまま千里を見上げてニヤリと笑う。



千里は一瞬で林檎のように顔を赤くした。





「お前が物欲しげに見るから、わざわざ断ってやったんだ」




吸っていた煙草を携帯灰皿に捨て、

大きく白い煙を口から吐き出す。





「あの、私、そんなつもりで……」






激しく鼓動する心臓を必死に抑えて話す千里。





その瞬間、男は千里の手首を掴み思い切り手前に引っ張った。


千里と男の距離が一気に縮まり、互いの顔は目と鼻の先に。






「今日も先生はカッコイイなって思ってたんだろ?……違うか?」






ジッと見つめられ、

千里はその悩ましげな瞳から目を反らす事すら出来ない。





「はい…」







―――どうして、わかっちゃうんだろう。






見つめられているだけで、
心の中や体全てが見透かしているような感覚だ。






「始めからそう言えばいいじゃねぇか。素直じゃねぇな」




男はそう言って不敵な笑みを浮かべると、そのまま千里にキスをする。







「んっ、はぁ……ふ」






深いデイープキス。
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