塾帰りの12分
「ただいま!
あれ?どうかしたの?」
険悪な空気を破ったのは、啓太郎だった。
「あ、啓太郎……
お帰りなさい」
おふくろはかろうじて啓太郎に微笑みかけた。
「ああ、おばあさま。
いらっしゃい」
祖母に気づいた啓太郎がそう声をかけると、祖母も表情を和らげて会釈を返した。
「おふくろ、腹減った、なんかない?」
啓太郎の言葉を受けて母が「ああ、ちょっと待って」と動いたのをきっかけに、俺も応接間を出た。
その後どんなやりとりがあったのか俺は知らない。
祖母が帰った後の夕飯時に顔を合わせても、おふくろも兄貴も何も言わなかった。
きっとまたばあさんが言いたいだけ言って、なんとなく終わりになったんだろう。
いつものことだ――……