塾帰りの12分
『ああ、聡美か?』
「はい……。
えっ、ちょっとやだ、何するのよ!」
後半は、電話の向こうの先輩にではなく、急に私のケータイに手を伸ばしてきた父親に発した言葉だ。
「今、食事中だろうが!
電話なんかするな!」
酔っ払った真っ赤な顔で私をにらんでる。
「はあ?
向こうからかかってきたんでしょ。
急用かもしれないじゃない!」
「うるさい!
食い終わってからにしろ!
ガキはつべこべ言わずに親の言うこと聞け!」
父親に取り上げられそうになってるケータイの、マイクの部分をぎゅっと両手で握る。
先輩に、こんな会話聞かれたくない。