蔓薔薇
いい加減、痺れを切らした
イサオさんは冷たく言う。

「アキラ・・・
 おまえ、もう帰れ
  
 タクシーを停めてやるから
 ほら、行こう」

イサオさんに脇を支えられ
その場に立つアキラさんの
やるせない表情を見た私は
考えるよりも先に言葉が
出ていた。

「イサオさん
 私も明日は仕事なので
 そろそろ帰ります
  
 アキラさん
 一緒に帰りましょう」

彼は、黙って頷いた。

私たちは、タクシーに乗車する
 
アキラさんは何も考えたくない
のか、ドアにもたれて瞳を
閉じている。

イサオさんは申し訳無さそうに
私を見つめて頭を下げた。

「ミオちゃん、ごめんね
  
 君が居てくれて助かったよ
 ありがとう」
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