蔓薔薇
イサオさんの腕に抱かれた後
彼女はとても辛そうな表情を
見せる事があったという。
 
彼女は、それでも彼を求めた
 
ナツキさんは、死んでもいい
程に彼を愛していた。
 
そこにある純愛に

私は胸が詰まった。
 
様態が悪くなったナツキさんの
長い入院生活が始まり、その間
イサオさんは毎日病院へ
通い続け、彼女の両親と共に
彼女の介護を行なう。
 
介護と言っても、辛そうな彼女
の傍に居てあげる

それだけがやっとで何の役にも
立つ事はできなかった
・・・と、彼は言う。

「その後、退院する事ができた
 ナツキは入院前のように
 元気に過ごしていた
  
 1ヶ月が過ぎた頃、病状は
 悪化し肺炎を起こし、病院へ
 運ばれ、危篤状態だと知らせ
 を聞いた時

 俺の隣にいたセリは、俺の
 行く手を阻んだ
  
 俺が死んでいく恋人を看取り
 深く傷つく事を避けたかった
 セリは・・・

 俺が部屋を飛び出したすぐ後
 に、ナイフで深く左手首を
 切ったんだ」
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