蔓薔薇
「そんな・・・」

イサオさんは結局、ナツキさん
の最後を看取る事無く、生死を
彷徨うセリナさんの傍にいた

「俺が守ってやると言いながら
 最後の最後に俺は

 ナツキを見捨てた・・・」

そう言い、やるせない表情を
浮かべ自分を責める彼。
 
私は彼の左手に、そっと
自分の手を添えた。

『あの時のように

 私を選んでほしい』
 
セリナさんがついさっき
そう言ったのは、こういう事情
だったのか・・・と

私は、やっと理解できた。

イサオさんとアキラさんが
セリナさんを大切に扱うのは
彼女がもう命を絶つような事を
決して行なわないようにする為
・・・
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