蔓薔薇
「ミオちゃん
 よくそんな高い靴を履いて
 早く、歩けるね・・・
 追いつけないよ」

「ごめんなさい・・・」
 
「謝らなくていいよ
  
 アニキにお店を聞いて
 君のバイトが終わるのを
 待ってたんだけど
 この後、時間あるかな?
 
 少し、話したいんだ」

彼のいつも以上に真剣な眼差し
に、私はただ黙って頷いた。
 
アキラさんは、私の手を
強く握りしめた。
 
今日の彼は、一度も笑わない

そんな彼の、いつもとは違う
雰囲気に戸惑い、知らない人に
手を引かれているかのように
私は緊張する。

「お腹、空かない?
  
 何か食べようか
 今度は、俺がおごるよ」

やっと彼が、私に
微笑んでくれた。
 
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