蔓薔薇
「ミオ・・・」

やめて・・・

私の名前を呼ぶのは・・・

私の心は凍りつく。
 
消せない過去に、私は
また支配される。

私は、ヨウジの方を見る事が
できない。
 
彼は、また私の名前を呼ぶ。

「ミオ、君のお母さん
 
 もうすぐ
 退院できるそうだね
 親父から聞いたよ

 良かったね」

優しく話すその声に、私は
もう騙されない。
 
彼は、私の耳元で囁いた。

「また、会いに行くよ・・・」

そう言い残し、彼は連れの女性
と店を出て行く。
 
その女性の腰に手を添える
彼の姿を見た時
私は、少しだけ安心した。
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