蔓薔薇
「アニキ
 あがっていかないの?」

「今日は帰るよ
 仕上げたい作品もあるし
 ・・・」

「そう
 じゃあ、アニキ」

アキラさんは車から離れ
荷物を持つ。
 
私はイサオさんの名を呼び
彼の元へと近づいた。
 
「イサオさん、今日は
 ありがとうございました
  
 それに忙しい中、母の
 お見舞いにまで・・・」

感謝の気持ちで胸がいっぱいな
私の瞳に涙が溢れる。
 
ううん、この涙は・・・

感謝の気持ちなどでは
図りし得ない程の私の想い。

彼の手が私の頬に触れる。
 
「いいんだよ
 何もなくてよかった・・・
 
 アキラには、彼が君に
 付きまとっているとしか
 話していないから安心して
 いいよ・・・」
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