蔓薔薇
前に倒れた私の至近距離には
イサオさんが・・・

目を閉じた私に彼はキスをした

そして、彼は愛しい人の名を
呼び、眠る。
 
「ナツキ・・・」

私は一瞬の出来事に何が起きた
のか分からなかった。
 
ただ彼の唇が私の唇に触れた事
 
イサオさんが亡くなった恋人の
名を呼んだ事

それだけは分かる。

私の瞳に涙が溢れ、彼は寝返り
をうち横を向く。
 
悪魔のキスに魅入られた私は
動けなくなる。

その数秒後に、イサオさんは
飛び起きる。

「ミオちゃん・・・」

「はい・・・」

「ごめん俺、今君にキスをした
 そのネックレスは・・・俺の
 俺、何か言わなかった?」

「いえっ、何も」

「少し眠るはずが・・・」
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