蔓薔薇
そう言い放つ、イサオさんの
顔を長尾さんが強く打つのを
見た私は、咄嗟に、工房の外
へ出ていた。

長尾さんは叫ぶ。

「今更、何言ってるんだ・・
 
 おまえは、セリナの気持ち
 に気づかないフリをして
 踏みにじったくせに」

長尾さんに、殴られて切れた
唇の端には血が滲み、ポタポタ
と地面に落ちる。
 
イサオさんは、狂気の表情を
浮かべて言う。

「惜しくなったんだよ
  
 アイツ、俺の言う事なら
 何でも聞くからさぁ」
 
長尾さんの表情が変わる・・・
 
彼もまた、深く
思い悩んでいたのだろう。

彼は、胸の中に抱えていた
 
全ての想いを言葉にして
吐き出す。
  
「おまえには
 セリナは渡さない
  
 俺はおまえなんかより
 ずっと、アイツを大事に
 してきたんだ
  
 これからも
 大事にしてみせる」
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