蔓薔薇
雨に佇むヨウジを残したまま
私はイサオさんと共に歩く。
 
駐車してあった車は、二人を
乗せて走り出す。

車内では、二人とも何も
話さない。
 
放心状態の私を心配そうに
見つめるイサオさんの瞳を私は
ただ、黙って見つめていた。

イサオさんの家に着いた私は
雨に濡れた為に体が震えていた

彼は、慌ててタオルを差し出す

「ありがとう・・・」

タオルを受け取る私の手を
彼は強く握り締めて、私を
温かい胸に抱いてくれる・・・

「ミオちゃん
 
 何があったの?」

私の瞳から零れた涙を
彼はそっと優しく手で拭う。

「私は、わたしが嫌い・・・」
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