蔓薔薇
私が母との事で悲しまなくても
いいように。
 
そんな彼に私は感謝しても
し足りない。

「彼は、後で
 迎えに来てくれるの」
  
母が過労で倒れた事で、義父は
このまま母に甘えていては
いけないと考えさせられ
タクシードライバーの仕事に
ついていた。

少しやつれた母の顔に、嬉しい
笑顔が浮かぶ。
 
この表情を見れただけでも
ここへ来た意味がある。

そう思わないと、私は・・・

ここへ来た事を後悔して
しまうから・・・

私は、玄関先で靴を履く。
 
本当は、まだイサオさんとの
待ち合わせ時間には早いけれど
義父が仕事を終えていつもより
も早く帰ってくる事を母から
聞き、私はこの場所で、義父に
会うことだけは絶対に避けたい

「また
 いつでもいらっしゃい」

歩いて行く私を、母は
呼び止めて言う。

「ミオ、イサオ君には
 たくさん甘えて
 幸せにしてもらいなさい」
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